【歯科医院向け】松澤弁護士のザワザワ法律相談室【vol.2】
歯科医院の皆さん、ザワザワ森へようこそ。
歯科医院経営や患者さん対応において 「これは法律的にOKなの?」「こういう場合はどういった対処が正解?」などなど、疑問・不安に感じていることはありませんか?
この森では、ザワザワ森の住人たちがそんな疑問や不安を、弁護士のマツザワ先生に相談して解決していきます!
さて、本日もザワザワ森に月一回の法律相談がやってきました。
本日のお悩みは「ハラスメント問題」です。
目次[非表示]
登場人物
歯科医院内の「パワハラ」についての相談
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
マツザワ先生!
新人スタッフから急に「パワハラで精神的に参ってしまい、心療内科に通院している」 と言われたんです!自分のどこが悪かったか一度お話しを聞いてほしく…。
⚖ マツザワ弁護士:
そうなんですね!?何があったのですか?
(急にパワハラって話したっていうけど、こういった場合スタッフは限界がきてから訴えることが多いんだけどね…💦)
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
スタッフのハトさんが事務長にパワハラを受けたって言うんですよ。
⚖ マツザワ弁護士:
ほうほう。どんなパワハラなんですか?
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
事務長に残業を強制され「あなたは若いんだから、このくらいやらないと。私も若い頃は死にものぐるいで働いたのよ」って言われたそうです。
ハトさんが食い下がったところ「何よ、あなた新人に毛が生えたくらいのくせに生意気なのよ、いいからちゃんとやりなさいよ!」って、みんなのいる前で大きな声で怒鳴られたらしいんです。
⚖ マツザワ弁護士:
なるほど。それを聞いて院長はなんて言ったのですか?
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
事務長も、確かに若い頃は苦労していたし、ハトさんのためになると思って言ったんじゃないかな?と。
しかしハトさんが言うには、そんなもめ事があったあとから、 事務長から何かにつけて怒られるようになったとか…。
・「掃除が行き届いてない」と言われて、必要がないのに終業後にもかかわらず、初めからやり直しさせられる。
・お昼を食べているのに電話対応できないと、大きな声でめちゃくちゃ怒られる。
って言うんですよね。
僕は、それは時期的に忙しくて事務長もイライラしてたんじゃないのかな?って話しました。
⚖ マツザワ弁護士:
なるほど。
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
でも、ハトさんが言うには、ハトさんだけターゲットにされているような感じで、「難癖をつけてくる」って言うんですよね。
そのせいで、ハト さんがスタッフの中で浮いた感じになってきたとか…
⚖ マツザワ弁護士:
なるほど。ハトさんとしてはこれからどうしたいとお話しているんですか?
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
この医院では働けないし、行くところに行って、話してくると。心療内科にも通っているそうで、精神的苦痛や、時間外労働の分の支払いを請求するといわれました💦
⚖ マツザワ弁護士:
そうなんですね。
時間外労働のことは、前回お話ししましたから、考え方はお分かりですよね?
今回のことでは、その他にいわゆる「パワハラの主張」がされるかもしれませんね。
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
うーん、、、そもそも、パワハラって何なんですか?
私の若い頃なんて、叱られことなんてしょっちゅうでしたよ。
⚖ マツザワ弁護士:
はい。もちろん、事務長さんが、スタッフの人に注意したり怒ったりすることが必要な時もあると思います。
ですが、それが業務上適正な範囲を超えてしまうと、いわゆるパワーハラスメントをしたということで、事務長さんやクマ院長が責任を負わなければならない場合が出てきてしまうんです。
具体的には、
- 職場の地位・優位性を利用して、
- 業務の適正な範囲を超えた指示・命令をし、
- 相手に身体的もしくは精神的苦痛を与えたり、その職場環境を害したりする
といったことが、パワーハラスメントだといわれています。
この業務上適正な範囲を超えるかどうか、というのは、ケースバーケースでなので慎重に検討しないといけないんですけどね。
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
なるほど。でも、ハトさんを怒ったのは事務長であって、私ではないですよ?
なのに私まで責任をとらなければいけないんですか?
⚖ マツザワ弁護士:
仮に、事務長さんにパワハラが認められた場合には、事務長を雇って使用している医院(院長)が使用者として責任をとらなければならない可能性が高いんですよ(使用者責任)。
それに、従業員を雇っている以上、院長は従業員が働きやすい良好な職場環境を維持しなければいけないと言われています(職場環境配慮義務)。
パワハラ等があるのに、その状況を放っておいてしまうと、これに違反することになる可能性もあるんです。
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
ひゃー、クマった!じゃあ、もし事務長がホントにハトさんにパワハラをしていた場合は、どうすればいいでしょうか?
⚖ マツザワ弁護士:
まずは、ハトさんが言った状況が本当なのか、事実関係の調査と把握を大至急する必要がありますよね。
それと同時に、ハトさんに対して、適切な範囲できちんと対応しなければいけません。
また、もし本当に事務長さんがパワハラやパワハラまがいのことをしていたのであれば、事務長にも適切に注意・指導し、状況次第では懲戒処分なども検討する必要があるでしょう。
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
はい、その点も改めて相談させてください。
⚖ マツザワ弁護士:
それに、パワハラはそもそも予防する措置を講じなければいけないルールになっていますが、それと同時に再発防止策もしっかりと立てないといけませんね。
医院ごとにいい方法が違うこともありますので、これから一緒に考えていきましょう。
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
はい、よろしくお願いします!
今回のポイント
- 使用者は従業員が働きやすい良好な職場環境を維持する義務(職場環境配慮義務)を負う
- パワハラは、①職場の地位・優位性を利用して、②業務の適正な範囲を超えた指示・命令をし、③相手に身体的もしくは精神的苦痛を与えたり、その職場環境を害したりすること
- 院長が直接パワハラをしなくても、使用者責任や職場環境配慮義務違反の責任を問われる可能性がある
- パワハラはそもそも予防措置を講じる義務があり、万が一起きてしまった場合は、迅速かつ適切に対処する必要がある
パワハラ問題において、検討・改善すること
トラブル予防のために
- 職場環境配慮義務の意識を持つ。
- 従業員間の関係の把握。
- 管理職との情報共有、コミュニケーションをとる。
注意するときも、TPOをわきまえて理性的に。 - 重要な注意は、書面で行うことも検討(証拠化)。
- 従業員との重要な話し合いは、できる限り録音または議事録化
🧸クマシカ歯科医院クマ院長:
マツザワ先生、今回もわかりやすい説明ありがとうございます!
ついつい自分の治療や雑務に追われて、あまり院内の環境について目が行き届いていなかったかもしれません💦
まずは、先ほどの改善ポイントを参考に、ハラスメントの予防策をきちんと定めて行きたいと思います🧸
また、スタッフのハトさんや事務長に対しては、先生と引き続き相談しながら、適切に対応していきたいと思います。
まとめ
いかがでしたか?
今回はパワーハラスメントの問題点でした。
働きやすい職場環境作りは難しいテーマの一つですが、スタッフに心地よく長く働いてもらうためには欠かせないことですよね。
パワハラ等の防止策を講じることは、事業主の義務にもなっていますが、防止策を講じることで、スタッフの生産性もあがり、良いスタッフに長く働いてもらえます。
生産性をあげる仕組みづくりや、スタッフの増員などを検討してみんなが働きやすい環境を作っていってくださいね。
※クマシカ歯科医院は実際に存在しない架空の歯科医院です。
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